安易な「うつ状態」という診断。実体を伴わない精神疾患の患者が増えている!
「あなたは“うつ”ではありません」産業医の警告5
【うつ病とうつ状態は同じもの?】
うつ状態は、激しく気分が落ち込んで意欲も低下しているという「症状」であって、それ自体が「病気」ではありません。
つまり、うつ病とは別のものです。
確かに、うつ状態は、うつ病の代表的な症状ですが、うつ状態が見られるからといってうつ病だというわけではありません。うつ病以外の病気や、病気以外の原因(失恋のショックや仕事の問題など)でもうつ状態になることがあります。
このうつ状態もうつ病としてカウントされれば、数字の上でうつ病患者が増えるのは当然だと言えます。
ところで、うつ状態は病気(病名)ではないと言っても、実際には本来病名が必要な診断書にそれが記載されることがあります。
そのような診断書を発行する理由は、医師によってさまざまでしょうが、私の個人的な印象では、精神科医がはっきりうつ病だと診断できないような患者に対し、ひとまず「うつ状態」と診断書に書いておくことが多いように思われます。
あるいは、「私は他の医師のように安易にうつ病だと診断していないぞ」というプライドの表われなのかもしれません。
しかし、たとえ精神科医がうつ病とうつ状態を自分なりに区別して診断書を書いているつもりでも、そこに「休養が必要」という文言があれば、どちらもメンタル休職の「印籠」になりえます。
医学の世界とはちがい、労働の現場では、診断書に書かれた「うつ病」と「うつ状態」は、ほとんど同じものなのです。
(取り上げる事例は、個人を特定されないよう、実際の話を一部変更しています。もちろん、話を大げさにするなどの脚色は一切していません。また、事例に登場する人名はすべて仮名です。本記事は「あなたは“うつ”ではありません」を再構成しています)。
<次回は 企産が産業医に圧力をかけている? について紹介します>
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